分数の問題を出す教材を作ったところ、同じ間違いを繰り返す人と、正答しても説明できない人がいました。ヒントを増やせばよいのでしょうか。それとも、問題の表し方や操作方法を変えるべきでしょうか。学習を支えるには、理解の仕組み、教材の設計、使うときの負担を分けて考える必要があります。[1]

この題材を、「認知科学・感性情報」、「教育・学習支援」、「HCI・情報デザイン」の3分野から見てみます。同じテーマでも、何を調べ、どんな方法で取り組むかに違いがあります。

同じ題材を3分野の視点から考える。
同じ題材を3分野の視点から考える。

認知の視点:間違いから、何が分かる?

答えだけを見ても、なぜ間違えたかは分かりません。例えば「1/2+1/3=2/5」と答えた人は、分子も分母もそのまま足せばよいと思っているのかもしれません。図を使えば理解できるのに計算だけで間違える人と、分数の意味自体が分からない人では、必要な説明が違います。どこでつまずいているかを確かめるため、解き方を話してもらったり、同じ分数を図で表してもらったりします。

正答率、回答にかかった時間、説明の内容などを組み合わせて検討する作業が考えられます。一つの操作記録だけから、その人の理解や能力を決めつけることはできません。

「2/5」と答えた後に図を描いてもらうと、計算の手順だけを覚えていたのか、分数の大きさを取り違えていたのかを考える手がかりになります。最初から理由を一つに決めず、違う表し方の問題でも同じ誤りが出るかを確かめます。正答率の数字と、解いている最中の説明を合わせて読むのです。

記憶・注意・判断などの仕組みに関心があれば、「認知科学・感性情報」分野の解説で、調べる方法とのつながりを見てみましょう。

学習支援の視点:何をできるようにしたい?

学習目標が「計算手順を使えること」なのか、「分数の意味を説明できること」なのかで、適切な課題やヒントは変わります。先に目標を決め、その目標に合う練習と振り返りを設計します。

教材を使っている最中に正答できることと、後から別の問題を自力で解けることも区別します。教材の導入前後だけを比べても、練習量など別の要因が影響しているかもしれません。評価する条件を考えることも専門の一部です。

例えば、答えを示すヒントと、分数を図にするヒントを比べるなら、直後の正答率だけでなく、数日後に似た問題を解けるかも調べます。練習時間や問題の難しさが違うとヒントの効果を比べにくいため、条件をそろえる工夫が必要です。便利な教材を作ることと、その教材が学びに役立つかを確かめることは、一続きの課題になります。

教育や科学、文化の国際協力を担う国連教育科学文化機関(UNESCO)は、技術を使うときにも、誰もが学べる機会を確保することなどを重視しています。新しい機能を入れること自体を成果にせず、誰のどの学習を支えるかを確認する視点が参考になります。[2]

教材と支援方法の設計に関心があれば、「教育・学習支援」分野の解説へ進めます。

HCIの視点:学ぶ前に、操作で迷っていない?

答えを入力する場所が分かりにくい、図が小さくて選べない、説明と操作が離れている。こうした問題があると、学習内容の難しさと画面の使いにくさが混ざります。

例えば、問題文を読む前に答えの入力欄が目立っているなら、「問題→図→入力欄」の順に並べ直してみます。ヒントのボタンを入力欄の近くへ置けば、困ったときに見つけやすくなるでしょうか。画面案を紙に描いて試したり、実際の操作を観察したりして確かめます。学習の目標を保ちながら、操作による余分な負担を減らす仕事です。

入力欄に「1/2」と打てない人がいても、分数が分からないとは限りません。キーボードの入力方法で困っている可能性があります。操作を観察し、分子と分母の欄を分ける案などを試すと、内容の理解と操作上の困難を切り分けやすくなります。

「HCI・情報デザイン」分野の解説では、使う人とシステムの関係を調べる視点を紹介しています。

ヒントを開いた回数だけで、理解したかは分からない

ヒントを何度も開いたという記録は、難しくて困った結果かもしれませんし、積極的に考えた結果かもしれません。記録を集める前に何を知りたいかを決め、本人の説明や課題の条件も確認します。

教材を作って試すと、予想外の間違い方や操作の迷いが見つかるかもしれません。その理由を調べ、説明や画面を直し、もう一度確かめます。学習記録の管理や統計的な分析も関わり、ここに挙げた三分野だけに閉じたテーマではありません。

大学選びでは、作ることと評価することの両方を見る

教材を制作できるかに加え、学習や認知の理論、実験・調査の方法、評価を学べるかを確認しましょう。大学院では、対象とする学習者や場面、研究参加者との関わり方も研究テーマを左右します。

「教育にAIを使う」といった言葉だけで選ばず、理解を調べたいのか、教材を設計したいのか、使いやすさを改善したいのかを手がかりに、各分野の解説から大学探しへ進んでください。

参考文献・注釈

  1. [1]
    この記事の説明は、分野ごとの考え方を紹介するための架空の例に基づいています。特定大学の授業や実施結果を紹介するものではありません。冒頭のイラストはtojihubによるAI生成画像、3視点の図はtojihubが作成した説明図です。 本文へ戻る
  2. [2]
    UNESCO「AI and technologies in education」。教育における技術利用と学ぶ機会に関する説明を参照。本文の教材の効果を裏付ける資料ではありません。 本文へ戻る