情報系の学科を調べていると、「多くの卒業生が大学院へ進学する」という案内を見かけます。大学院は、難しい授業をさらに受ける場所なのでしょうか。それとも、毎日研究室で何かを作る場所なのでしょうか。
ここでは、学部の後に進む修士課程を取り上げます。情報系の学部では、一般に、授業や演習で学んだことを土台に卒業研究に取り組みます。修士課程は、その研究経験を踏まえて専門を深める段階です。大学院でも授業を受けながら、一つの問いに継続して取り組む研究の比重が大きくなります。どのような違いがあるか、具体的に見てみましょう。[1]

学部の卒業研究から、修士研究へ
学部では、数学、プログラミング、コンピュータの仕組みなどを広く学び、専門科目や演習へ進みます。多くの情報系学科では、最終学年に研究室などで卒業研究に取り組みます。先行研究を読み、問いを立て、実験や分析で確かめ、卒業論文や発表にまとめるのは、この段階から行うことです。東京大学情報科学科の案内では、理論、計算機の仕組み、応用を扱う科目と、実験・演習・卒業研究が組み合わされています。[2]
修士課程では、卒業研究と同じテーマを深めることも、別のテーマや研究室へ移ることもあります。専門の授業と研究指導を並行して受けます。論文を読んで既存の方法を理解し、教員や研究室の仲間と相談しながら、自分が調べる課題と方法を決めていきます。京都大学情報学研究科の授業一覧には、各専門の講義に加え、演習や研究を進める科目が掲載されています。[3]
| 確かめたいこと | 学部での学びの例 | 修士課程での学びの例 |
|---|---|---|
| 授業 | 数学・プログラミングから専門科目へ進む | 選んだ専門を深め、研究に必要な周辺分野も学ぶ |
| 演習・実験 | 学んだ方法を実装し、結果を確かめる | 既存の方法を再現し、条件を変えたり改良したりする |
| 研究 | 卒業研究で問いを立て、先行研究を調べ、実験・分析などで確かめる | 研究経験を土台に問いを深め、方法の改良や追加の検証に取り組む |
| 成果の説明 | レポートや卒業論文、発表にまとめる | 修士論文や研究発表で、方法・結果・限界を説明する |
卒業研究も、既に分かっていることを調べるだけでなく、自分の問いに根拠をもって答えようとする研究です。修士研究とは、研究に使える期間や、取り組む課題の深さ・広がりなどに違いがあります。表は学び方の目安で、具体的な内容や授業との配分は大学・研究室によって異なります。
画像認識プログラムが「動く」から、「なぜ間違えるか」を調べる研究へ
例えば、写真から植物の種類を見分けるプログラムを考えてみます。授業や演習では、用意した写真でモデルを学習させ、別の写真で正しく分類できるかを確かめる課題が考えられます。プログラムを書く力だけでなく、学習用と評価用のデータを分ける理由や、正解率の計算も必要です。
そこから研究の問いを深めるなら、「晴れた日に撮った写真では当たるのに、暗い場所ではなぜ間違えるのか」「写真が少ない植物でも識別するにはどうしたらよいか」といった問題が考えられます。
まず、似た問題を扱った論文を探します。既存の方法を実装し、自分の条件でも同じ結果が出るかを確かめます。改良した方法がうまくいったら、単に学習時間を増やした効果ではないか、別の写真でも改善するかを調べます。うまくいかなかった条件も、理由を考える手がかりになります。
研究は、必ず画期的な製品を完成させることではありません。「この条件では有効だが、この条件では難しい」と、根拠を持って説明できるようにすることも大切です。卒業研究でこうした問いに取り組み、修士課程では、例えば別の植物や撮影条件へ検証を広げ、方法をさらに改良していくことが考えられます。[4]
研究室紹介は、テーマ名の先まで読もう
同じ「AI」の研究室でも、理論を証明する、学習の方法を改良する、医療画像を分析する、ロボットを動かすなど、取り組み方はさまざまです。紹介ページでは、次の三つを探してみてください。
- 何を明らかにしたいか。 速さを改善するのか、誤りの理由を調べるのか、人の使いやすさを確かめるのか。
- 何を使って確かめるか。 数式、公開データ、実機、人への調査など、自分が取り組みたい方法か。
- 学生が何に取り組んでいるか。 修士論文や発表の題名を見ると、研究室全体の大きな目標より具体的な課題が分かります。
難しい題名を最初からすべて理解する必要はありません。知らない言葉を授業一覧や分野解説で調べ、研究室公開などで「この研究には何を学んでおくとよいですか」と質問する材料にしましょう。
学部選びと、大学院選びをつなげて考える
高校生の段階では、将来の研究テーマを決めきらなくても構いません。関心のある分野を学べることに加え、基礎科目から演習・卒業研究へ進む流れ、コースや研究室を選ぶ時期を確認すると、入学後の学びを想像しやすくなります。
大学院を探す段階では、研究したい内容、指導する教員、必要な基礎科目、研究環境をより具体的に調べます。今の大学で続ける場合も、他大学へ進む場合も、募集要項で出願資格・試験・事前相談の扱いを確認しましょう。研究室への配属や受け入れは、希望だけで決まるとは限りません。
進学者の割合は、卒業生が選んだ道を知る情報の一つです。その数字をきっかけに、「そこで自分は何を学び、何を確かめたいか」まで考えてみてください。
参考文献・注釈
- [1]情報系の大学学部と、研究指導を受ける修士課程の学び方を紹介します。個別の履修・修了要件は大学の公式案内で確認してください。 本文へ戻る
- [2]東京大学「情報科学科・コンピュータ科学専攻 案内2026」の教育課程・実験・研究紹介を参照。 本文へ戻る
- [3]京都大学情報学研究科「2026年度 授業科目の概要」を参照。 本文へ戻る
- [4]植物の画像認識は、演習と研究の違いを説明するためにtojihubが構成した例です。特定大学の授業・研究成果を紹介するものではありません。 本文へ戻る