マス目の上で駒を動かし、旗までたどり着くゲームを作ることにしました。壁や扉を置いたのに、遊ぶ人はすぐに飽きてしまいます。見た目を変える、音で反応を返す、ルールを工夫する、解ける経路があるか調べる。同じゲームにも、異なる専門の問いがあります。[1]

この題材を、「ゲーム・エンタテインメント」、「画像・音声・CG」、「理論・数理・計算科学」の3分野から見てみます。同じテーマでも、何を調べ、どんな方法で取り組むかに違いがあります。

同じ題材を3分野の視点から考える。
同じ題材を3分野の視点から考える。

ゲームの視点:何を面白いと感じてほしい?

短い時間で道を見つける楽しさと、ゆっくり仕組みを理解する楽しさでは、向いているルールが違います。遊ぶ人にどのような判断をしてほしいか、成功や失敗をどう知らせるかを考えます。

試しに遊んでもらい、どこで迷い、どこで再挑戦したくなったかを観察します。作り手が難しいと思った場所と、初めて遊ぶ人が困る場所は同じとは限りません。完成品を評価するだけでなく、試作と見直しを繰り返すことが学びになります。

例えば、迷った人にすぐ正解の道を表示すると、進める一方で考える楽しさがなくなるかもしれません。「行き止まりの方向だけ知らせる」案と比べ、再挑戦した回数や本人の感想を調べます。クリアまでの速さだけで面白さを決めず、狙った体験が生まれたかを確かめます。

こうした体験の設計に関心があれば、「ゲーム・エンタテインメント」分野の解説へ進めます。

画像・音の視点:操作した結果を、どう伝える?

駒が一瞬で移動する場合と、短い動きを伴って移動する場合では、操作した感覚が変わります。壁にぶつかったことを音だけで知らせると、音を聞けない環境では伝わりません。

形・動き・音を組み合わせて、何が起きたか分かるようにします。表現を豊かにする一方、描画や音の処理に時間がかかると、入力に対する反応が遅れることがあります。表現と処理の関係を確かめる作業です。

ボタンを押した瞬間に短い音を鳴らし、駒が動く様子も見せると、入力を受け付けたことを伝えられます。ただし、音が遅れたり動きが長すぎたりすると、次の操作をいつしてよいか迷うかもしれません。反応までの時間を測ることと、実際に遊んだ感覚を聞くことの両方が必要です。

「画像・音声・CG」分野の解説では、画像や音を扱う技術を広く紹介しています。

数理の視点:その迷路には、解ける道がある?

迷路の各マスを点にし、隣へ移動できる点の間に線を引いてみましょう。「スタートの点から、ゴールの点まで線をたどれるか」という問題に置き換えられます。この点と線による表し方を、数学ではグラフと呼びます。鍵を拾うと扉が開くゲームなら、同じマスにいても、鍵を持っているかどうかで進める先が違います。そこで、現在地と持ち物を組にして調べます。

経路が一つでもあるか、最短の経路はどれか、候補が増えたときにどのくらい計算が必要かは、別々の問いです。小さな迷路を手で調べてから、探索の手順を実装し、条件を変えて確かめられます。

鍵と扉を増やすと、単にマスの数を数えるだけでは計算量を見積もれなくなります。同じ場所でも持っている鍵が違えば、調べる状態が増えるからです。同じ状態を何度も調べないよう記録する方法を試せば、「記憶する量を増やして、計算する回数を減らす」という工夫も見えてきます。

問題の表し方や計算の性質を深めたい場合は、「理論・数理・計算科学」分野の解説が入口になります。

動くことと、遊びたくなることを合わせる

必ず解ける迷路が、必ず面白いとは限りません。逆に、魅力的な絵や音があっても、ルールの説明が伝わらなければ遊びにくくなります。異なる問いを分けて確かめ、試作へ戻して考えます。

非営利団体のScratch Foundationが運営するScratchは、命令のブロックを組み合わせて、ゲームやアニメーションを作れる環境です。これは制作を始める実例であり、大学での専門教育の全体や、特定大学の使用教材を示すものではありません。[2]

動くプログラムを作る「ソフトウェア・プログラミング」分野、操作を考える「HCI・情報デザイン」分野、複数人で遊ぶ通信を支える「ネットワーク・通信」分野も関わります。この図は、三分野だけでゲームを作れるという意味ではありません。

大学選びでは、制作の後に何を確かめるかを見る

作品を作る授業では、プログラム、数理、表現、遊ぶ人の評価のどこを重視するかを確認しましょう。大学院では、生成方法を研究したいのか、表現を研究したいのか、体験を調べたいのかでも研究室の探し方が変わります。

ゲームが好きという関心から出発し、深めたい問いを扱う分野の解説へ進んでみてください。

参考文献・注釈

  1. [1]
    この記事の説明は、分野ごとの考え方を紹介するための架空の例に基づいています。特定大学の授業や実施結果を紹介するものではありません。冒頭のイラストはtojihubによるAI生成画像、3視点の図はtojihubが作成した説明図です。 本文へ戻る
  2. [2]
    Scratch Foundation「Scratch」。制作を通した学習の入口を示す公式説明。 本文へ戻る